fukeigaku

キュレター:  太田 エマ
プロデューサー:地場 賢太郎

2016年  9月 19日(月) - 10月2日 (日)
11:00-19:00(会期中無休)

※この展覧会は全3回シリーズの第2回です。

会場: Art Lab Akiba

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個展/作品について
「うつりつく、今。Come and GO 」

 (前回の展示によって、わたしは生まれつき聞こえないからこそ、聴覚を失うという経験がなく、意味を持たないから実感できないと改めて気づいた。)
 カタチとして見えてなくても、過去も未来も「現在」にあると思う。
全てひっくるめて、つながって、包んでいるとしたら、異文化の行き来することができる。

アイデンティティの再構築と自己像を探求していく過程は まさしく「Deafhood」だと思う。

気付いた者が探しに行くと、わたしは創造的に考える。
(My thoughts are creative.)



逆さの行き来

太田 エマ

 水晶玉は過去と未来が現在に現れる空間である。今とは成立したものであり、今という時はこれから生まれるものである。何が在ったのか、何が見えるのだろうかと凝視する事は確かな距離感もしくは透視的な視点を持ち直視することが比較的容易である。しかし現在進行形としての「今」と向かい合う事は全く違う話である。

 諸星春那は「Deafhood」※の過去、現在、そして未来の検証を続けており、今回は最も挑戦的な現在という時間に主題を置く。昨年の展覧会では、彼女は過去という時間を探り、パディ・ラッド氏の極めて意義深い著作である「Understanding Deaf Culture: In Search of Deafhood・(邦題:ろう文化と歴史と探訪 明石書店)」の中で語られている、(そんな遠くない)過去のろう文化に対する聴者側からの植民地主義を記録する博物館へと我々を導き入れた。この諸星の最初の個展会場には、20世紀後半、ろう学校で使われていた口話教育補助装置や補聴器が博物館の展示物のように、それに対する異議申し立ての挑発的象徴であるハンマーと一緒に展示された。今回の展覧会では彼女は現在に視点を移し、並行して存在する二つの異なる世界がお 互いに十字に交差していることに注目している。

 今回の展示空間に私たちが入ると、内なる知覚についての世界と私たちが「ものを見ること」自体への問いかけが重なり合った世界へ足を踏み入れることになる。普段、私たちは当然となってしまった、そこらじゅうに貼り付けられている感覚的な目印のを通して周りの環境を読み込んでいるだろう。しかしその確認の目印の札がひっくり変えってしまった時にこそ、私たちは新しい気付きを得て、物事を全く違った形で理解するのかも知れない。ここで諸星が提案している「現在」は選択肢である。それはパディ・ラッドが彼の選択をDeafhood文化の豊かな遺産で満たされている博物館の秘密の部屋に入ることになぞられているように、またそれはラッドが一度壁に掲げられた絵画を逆さにしてしまうことを決心したかのように、このギャラリーを訪れる観客は選択することを引き受け、そして手に取るべき道具と共に、実は彼らが心のままに、頻繁に訪れることが出来るもう1つの世界を発見することになるだろう。

 現在は複数のもので、決して単一のものではない、そして進行しているもので、決して固定されているものではない。そしてこの多様で実りある潮の干満の様な一進一退を表現出来る言葉を得た時に、我々はこの経験を沢山の言語で表現しようとする多種多様な試み気づき、世に知らしめる時を迎えることが出来るのだ。

 我々の前の課題とはこの選択を実現させる事であり、直面しているのは行動へ移すきっかけである。

 ※Deafhood(デフフッド)とは「ろうであること」を意味しており、従来のデフネス(deafness=医療上の聴覚障害)とは一線を画するものとして、パディ・ラッド博士が提起した概念

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