The Rings of Saturn Top

Placebo1

 

土星の環

 その場所は時空を超えてしまったのであろうか、それともそこでは時間は流れることを止めてしまったのであろうか。そこは古い道路から灰色の川岸に広がっている見捨てられた一種の間合いの領域であった。砂利とバラバラになったコンクリートブロックの向こう側に泥濘地帯が広がっていた。そこはコンクリートパイプからの流出とぬかるみからの泥流で所々途切れている水流で分断されているのだった。航路ブイの鉄骨の残骸は、 泥と川とそして空によって作られた幾重にも水平に重なる平らな広がりの中で、灰色の雲へ硬直した姿勢で垂直に屹立していた。
 霧が降りてくる日は遠い対岸にある工場の気配さえなかった。そしてその場所に未来のある時間のエコーが出現した。その未来において残ったものの全てと言えば、生命の絶えた岸辺にある人知れない構造物の廃墟であり、地球のエントロピー的終焉であった。 我々はその未来への時間旅行者になったのだ。
 この岸辺の風景の記憶に私は取り憑かれているのだろう。そしてこれから出現するであろう未来の化石のような場所を見つける度にこの想念は甦る。現在という時間をレンズに通して屈折させる、そしてそれぞれの新しい廃墟は以前の場所の無数の反射のようで、現在は廃墟に満ちた過去と将来の廃墟の幻影に満たされた未来へと拡張される。
 これらの廃墟は資本が次の人間と自然の供給源を求めて立ち去る時に生じる,社会構造の崩壊、夢の終焉、ユートピア構築の失敗など、巨大な崩壊を反映している。国々の勃興と崩壊、都市、そして歴史それ自体が国々の廃墟の上に立っていることについては今更ここで繰り返す必要もないであろう。今、隆盛を極めようとしている帝国とは、地理学的、もしくは政治的に限定されたものではなく、搾取と分割を旨とする金融制度の信仰の上に建設されようとしている。風景を汚してしまう廃墟はその経済が支配する帝国の間近に迫りつつある崩壊の予兆であり、取り戻すことの出来ない過去として現れる我々の現在の未来の姿を反映させている。

ダンカン・マウントフォード

Placebo1

Still fromThe Rings of Saturn 2014 

Placebo1

Left : ordinary facts arranged within time,
Various materials, including hand-made slide projectors, 35mm photographic slides,
timber, lights, curved panels with red linen. Size: 450cm x 450cm x 250cm. 2000


Right:The Problem of Knowledge,
Various materials, including found school desks, mirrors, magnifying lenses,
two single-channel videos with sound, 35mm photographic slides. Dimensions variable. 2010

CV(英語のみ)

website : duncan-mountford.moonfruit.com

e-mail: duncphd@yahoo.co.uk